「入居率が上がらない」「いつも空室がある」との悩みを抱えたアパートオーナーだけでなく、これからアパートの購入を考えている人も知っておきたい入居率を上げる方法をいくつかご紹介します。

★アパートの入居率とは?
『時点』ベースの入居率
「ある一定の期間の入居戸数÷全体戸数」で算出される『時点』ベースの入居率。
『稼働』ベースの入居率
『稼働』ベースの入居率。「年間を通して、各部屋の稼働している(=入居している)日数の割合」
退去後の室内クリーニング期間を稼働期間に含めるか否か、など不動産業者によって稼働期間の定義にバラつきこそありますが、時点ベースの入居率と比べると、1年を通してどのくらいの割合で入居されていたか分かります。なので、オーナー様にとっては判断材料に値するリアルな数値と言えるでしょう。ただし、時点ベース・稼働ベースの入居率は、どちらも「入居しているか否か」に焦点を当てたものです。たとえ家賃を値下げして入居を促していたとしても、それは考慮されておりません。
オーナー様にとって本当に重要なのは、入居しているかどうかではなく想定通りの賃料が入ってくるかどうかではないでしょうか?
『賃料』ベースの入居率
その参考にできるのが、3つ目、『賃料』ベースの入居率。
「賃料収入の実績÷物件購入時の想定満室時賃料」より算出されるので、家賃の下落も反映され、より現実味のある数値となります。このように、ひとくちに「入居率」と言っても、その定義や算出方法はさまざまです。
今回は、オーナー様にとって最も重要と思われる『賃料』ベースの入居率を上げる方法をご紹介します。
★アパートの入居率が上がらない理由
アパートの入居率を上げる方法を説明する前に、まずは入居率が上がらない原因を探る必要があります。ここでは、代表的なアパートの入居率が上がらない理由を3つ紹介します。
エリアのニーズに合っていない
どんなに立地が良く最新設備の物件を建てたとしても、そのエリアにターゲットとなる入居者がいなければ入居率は上がりません。
例えば、同じ30歳の女性でも、都心で働く1人暮らしのOLさんと子持ちの主婦では住まいに対するニーズが異なります。OLさんなら、間取りは1Rや1LDKで通勤に便利な駅チカで、オートロックや室内物干しなどの設備がある物件を好むでしょう。一方、子持ちの主婦なら、2LDKや3LDKなど広めの部屋で、小学校に近くて、駅は少し遠くても駐車場があって…といったニーズが考えられます。エリアのニーズと物件のターゲットが合致していないと、そもそも入居は見込めません。市場のニーズにマッチしない物件を建てる不動産会社が悪いとも言えるのですが、オーナーとしてはきちんとニーズとターゲットを理解して購入物件を選びたいものです。なお、市場のニーズは周辺の再開発などによって数年でも大きく変わります。そのため、現状のニーズにマッチしていることはもちろんですが、エリアの将来性まで予測して物件選びをする必要があります。
内見の印象が悪い
内見者がいるのに入居率が上がらないときは、内見時のアパートの印象が悪いのかもしれません。内見者は、部屋の中だけでなくアパートの廊下や階段・ゴミ捨て場の汚れまで、内見したときにチェックしています。共用部が汚れているアパートは、管理会社やオーナーによる管理が行き届いていないとみなされ、自分が入居したときに、「室内設備が壊れても修理してもらえないかもしれない」「管理がいい加減なのではないか」という不安を与えてしまいます。特に、外壁の汚れの洗浄は高額な費用がかかるため放置されている物件も見かけますが、内見者にとっては外観こそがその物件の第一印象です。ここの印象が悪いと、せっかく部屋の中を綺麗にリノベーションしていても全体的な印象が下がってしまいがちです。また、不動産仲介業者の視点で考えると内見者を物件に案内しても、「汚いからここはイヤだ」と言われてしまうことが続いては、仲介業者からすると「内見させてもどうせ決まらない物件」とみなされてしまいます。仲介業者は成約して初めて利益を得られるので、案内しても成約しない物件にわざわざ時間を使って案内したくありません。となると、そもそも紹介さえしてもらえなくなるのです。さらに、業界には、汚い方の物件を当て物件(=通称 アテブツ)という「汚い物件を見せてからキレイな物件を見せることで、内見者に比較させてキレイな物件に決めさせる」という営業手法もあります。あなたの物件がアテブツにされてしまっては、もう決まらないも同然ですので、そうなる前に対策が必要です。
退去のタイミングが悪い
一般的に、引っ越しをする人が多いのは進学・就職・転勤シーズンの1月~3月と、転勤シーズンの9月~10月あたりです。
なので、4月に退去が出てしまうと、どうしても入居付けは苦戦してしまいます。退去の理由が、物件によるもの(騒音がひどい・雨漏りがする・管理状況が悪い…など)が続くようであれば考えものですが、ほとんどは入居者の都合によるもの(就職する・転勤する・結婚する…など)です。そのため、退去のタイミングの悪さについては防ぎようがない部分でもあります。なお、社会人向けの物件であれば1年を通して引っ越しのニーズがあるのでまだ良いですが、学生向けの物件となると、4月に退去が出てしまうと来年の4月に新入生が入ってくるまで、入居が決まらない、といった事態が起こります。リスク回避のためには、学生・社会人どちらも狙える物件を選ぶなどの工夫も必要です。
★アパートの入居率を上げるBEST5
アパートの入居率が上がらない理由を抑えたところで、どうやったら入居率が上がるのか、その方法をみていきましょう。
- 外観をメンテナンスする
- ホームステージングをする
- 人気の設備を入れる
- 広告費やフリーレントを使う
- リフォーム・リノベーションをする
外観をメンテナンスする
部屋の中は入れ替えのたびにメンテナンスすることが一般的ですが、建物の外観については汚いままという物件も少なくありません。共用階段や廊下・外壁・エントランスは築年が経つにつれ、雨風でどうしても汚れていきます。物件の汚れは色素沈着しますので、汚れが軽度なうちに手をかければ清掃費用も数万円で済むものも、汚れが重度になると張り替えや交換などで数十万円とかかるケースもあります。古くてもきちんとメンテナンスをしてあれば、内見者にマイナスの印象を与えずに済みますので、こまめに手をかけてあげましょう。また、ゴミ置き場に粗大ゴミが放置されていたり、明らかに使われていない自転車やバイクが停めてある場合も要注意です。内見者からの印象を下げるだけでなく仲介業者に入居付けを依頼している場合、「あの物件はいつも管理状態が悪い」という噂が立ってしまい、そもそも紹介してもらえなくなるということも考えられます。
ホームステージングをする
ホームステージングとは、空室の物件に家具や小物をコーディネートしてモデルルームのように見せることです。部屋の第一印象が大きく変わるので、内見者の心を掴むことができます。ホームステージングをするとき、すべての家具家電を置く必要はありません。
部屋の雰囲気を大きく左右するラグやカーテン、実際の暮らしをイメージしやすくするテーブルやチェアだけ置いておき、あとはお洒落な小物で飾ってあげるだけでも部屋の印象はぐんと変わります。なお、床全体を覆ってしまうようなラグや、部屋に対してサイズの大きすぎるテーブルを置いてしまうと、部屋が狭く見えて逆効果になってしまう場合もあるため注意が必要です。インテリアコーディネートに自信がない方は、ホームステージングを請け負う会社もあるので、一括で依頼してしまうのもひとつの手です。自分でインテリアを購入し実施すれば、コストは数万円で済み、空室のたびに使い回して利用もできます。また、ホームステージングした部屋の写真をSUUMOなどに掲載すれば、他の物件と差別化でき、あなたの物件に狙いを定めて問合せする内見者を増やすこともできます。入居率アップのための施策のなかでも、費用対効果の高い施策と言えるでしょう。
人気の設備を入れる
アパートの設備はどんどんバージョンアップしていますので、時代の変化に沿って人気の設備を追加していくことは入居率アップのひとつの方法と言えます。ただし、オートロックや無料インターネットなどの大掛かりな設備の導入は、効果もありますがコストもかかります。下記のような設備であれば、比較的低コストで導入ができて、入居付けにも優位に働きます。
- ・宅配ボックス
- ・防犯カメラ
- ・エアコン
- ・室内物干し
特に、宅配ボックスは近年、需要が急上昇しています。県によっては設置の際に助成金が出る場合もありますので、制度を上手く使えば低コストで導入できます。また、防犯カメラや室内物干しは入居ターゲットが女性の場合に特にプラスに働きます。防犯カメラは、オーナーが24時間リアルタイムの状況をスマートフォンで確認できるものもありますので、入居促進のためだけでなく、遠方の物件の管理状況を確認する意味でも設置される方が増えているようです。
広告費やフリーレントを使う
先で挙げたように、「タイミング悪く閑散期に退去が出てしまった」「物件自体に問題はないのになかなか入居が決まらない」といった場合には、広告費やフリーレント(最初の一定期間の家賃を無料にすること)により、入居を促進するのもひとつの方法です。そもそも内見者が少ないという場合には、仲介業者が積極的に決めようとしていないということも考えられますので、広告費の上乗せにより販促を強化してもらうのが良いでしょう。内見はあるが決まらない…という場合には、フリーレントOKの旨を仲介業者に伝えておくと、押しの一手として使ってもらえるでしょう。家賃を下げるという方法もありますが、それは最後の手段として取っておくことをお勧めします。一度家賃を下げてしまうと、途中からは上げにくいうえ、物件自体の価値が落ちてしまいます。よっぽど市場の相場とかけ離れている場合は別ですが、基本的には家賃以外のところで工夫し、入居率を上げたいものです。
リノベーションをする
リノベーションとは、建物に大規模な改修工事を行い、付加価値を加えて部屋を造り変えることです。アパートの築年数が経っていて設備の追加や広告費では入居率が上がらないという場合には、思い切ってリノベーションをしましょう。入居者のニーズは刻一刻と変わっています。例を挙げると、登場時はオシャレと話題だった3点ユニット(バス・トイレ・洗面台が一緒になっているバスルーム)も、今の賃貸ニーズには合致しにくくなっていて、「バス・トイレ別」を求める人が増えています。このような時代の流れにいかに対応していくかは、オーナーの手腕が問われるところです。コストはかかりますが、リノベーションによって今の賃貸ニーズにマッチした部屋に仕上げられれば、入居率アップだけでなく、家賃アップや資産価値アップも見込めます。最近は、「入居者に好きな壁紙を選んでもらう」など、選択の余地を持たせたリノベーションも人気のようです。

★アパートの入居率を上げるにはまずは原因解明が必要
空き室がなぜ出来るのか?埋まらない理由は何か?そこにはエリアニーズや物件ターゲットの相違や駅からの距離、周辺環境、周辺相場やアパート外観、維持管理状況など様々な要因があると思われます。きちんと信用できる不動産管理会社がいれば相談し解決できることもあるはずです。キチンと原因を解明し必要最低限の対策を行えば満室稼働になっていくケースは多いですから、みなさんもきちんと考えてみましょう。
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