収益物件(1棟アパートや1棟マンションなど)新築で建てたり新築物件や中古物件を購入しても、大家さんがそのアパートに住むことは問題ありません。アパート内に居住空間を確保しながら毎月の家賃収益を得られるアパート経営は場合によっては節税対策にもなるなど、さまざまなメリットがあります。
今回は、収益目的のアパートに住む際の注意点や、収益物件に住むメリット・デメリットを解説します。

★経営するアパートに大家さんが住む
収益を目的とした投資用物件にはさまざまなものがありますが、居住用の賃貸物件として家賃収入を得るタイプの投資用物件は、初心者でも始めやすいものとして注目をされています。居住用の投資物件の中でもアパート経営は、一棟まるごと購入または建築し、各部屋を賃貸とし貸し出すことで収入を得る一棟投資です。
一区画だけを購入して貸し出す区分投資型のマンションと異なり、「家賃収入が0になってしまうリスクが少ない」「建物が古くなっても土地が資産として残る」などのメリットがあります。
オフィス物件などと比べると初期投資が少なくて済み、人気のエリアや今後需要が期待できるエリアなどを選べば、長期間比較的安定した収入が期待できます。
投資用物件としては比較的購入もしやすい上に収益面でのリスクが少なく、もし売りに出すとしても売却しやすいことから、アパート経営はおすすめの不動産投資です。

経営するアパートには大家さん自身が住むことも可能ですが、部屋を賃貸として貸し出しているアパートの一室に大家さんが住むと「自宅兼アパート」という投資用物件に該当します。銀行などの融資を受ける場合、自宅兼アパートの投資用物件を購入または建築する場合、融資を受ける銀行の許可を取る必要があります。経営目的のアパートに対するローンは、金利の低い住宅ローンではなくアパートローン(投資ローン)を組むためです。アパートローンの査定は、金融機関が家賃収入の見込みや、どれくらい利益が出るかなどの情報を加味して、融資の可否や金額、金利を決定します。全室を貸し出す予定で査定したにも関わらず、一室に大家さんが住んでしまうと、その分家賃収入が減ることになるからです。当初の査定条件から見込が変わってしまうため、融資を受ける銀行の許可が必要になるのです。銀行に何も知らせずこっそり住んでいるのが発覚した場合は、一括支払を求められることもあるため注意しましょう。
また、賃貸アパートとして所有している物件にそろそろ住もうと考えても、既存の入居者がいる場合は、大家さん都合で退去を依頼することはできません。最初は賃貸アパートとして経営し、将来的にその物件に住みたいと考えているなら、空室になるタイミングを待つ必要があります。投資用のアパートを購入または建築するなら、長期的な利回りについても十分に理解しておきましょう。アパートの一室に大家さんが住むとなると、それだけで一室分の家賃収入が減ってしまいます。ここまで計算に入れた上で、見込める収益を考えて不動産投資をすることが大切です。
上記のような投資物件の他に、大家が住むことのできる物件として「賃貸併用住宅」というものがあります。これは住宅の一部を賃貸として貸し出す物件で、例えば一階部分が大家の自宅で二階が賃貸になっているような物件を指します。大家さん生活.comでパッケージ提案をしている「自宅で大家さん」のように自宅をリノベして賃貸部分を作り家賃収入生活をすることも賃貸併用住宅となり、これに該当します。賃貸併用住宅を新築で建てる場合は自宅面積が50%以上あれば、低金利の住宅ローンを利用可能です。「自宅で大家さん」の場合にはすでに自宅を所有していますので、そのような制限はなくリフォームローンなどを利用することが可能です。
収益物件に住めば、利益を得ながら住居を確保できるだけでなく、土地を有効活用でき、さらに固定資産税や相続税の節税になることもメリットです。

家賃という毎月定額の収益が得られるアパート経営や賃貸併用住宅は、資金計画によっては月々の家賃収入の金額内でローンを返済できます。つまり、家賃収入が返済金額より上回るようであれば、実質手出しなく運用できる可能性があるのです。大家さんが別途自宅を建てたり、賃貸を借りたりする場合は自宅に関わる費用が発生しますが、収益物件に住むとその必要がなくなります。手出しのない資金計画を立てるには、空室率などを考慮した利回りを基に、ローンの返済金額や経費、税金などを計算して黒字運用ができるかどうかを考えることが大切です。大家さんが住む一室は家賃収入が発生しないため、その場合は忘れずに差し引いて考えましょう。
「いずれ自分も住もう」と考えてアパートを購入または建築したとして、相続税や固定資産税はどうなるのか、心配になる方もいるかもしれません。実はアパートを購入したり建てたりすることは相続税や固定資産税対策になる場合があります。
相続税
アパートを購入または建築した場合、建物と土地の両方で節税できる可能性があります。
・建物
相続税を計算するときは相続税評価額を用います。現金を相続する場合は、相続した額面そのものが相続税評価額です。不動産の場合は実際の取引額を参考に毎年相続税評価額が決められます。これはおおむね公示価格の8割程度と言われています。単純に考えると、現金であれば額面どおりの金額に相続税がかかることになりますが、同じ金額でアパートを購入または建築した場合、費用の8割程度にかかる相続税で済むというわけです。またローンが残っている場合、残高そのものが負債として計上され、相続額から控除されます。
・土地
賃貸物件を所有している場合、条件を満たしていれば小規模宅地等の特例が適用され、200㎡までの土地の相続税評価額が50%に減額されます。また、借家権割合でも相続税の減額が見込めるでしょう。居住者のいる賃貸物件がある土地は簡単に転用ができないため、財産としての価値が低くなります。そこで借地権割合が算出され、相続税が減額されるようになっているのです。借地権割合は地域ごとに異なりますが、おおむね30%に統一されています。
参考:国税庁
相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
貸家建付地の評価(2022-06-29)
固定資産税
住宅用地は、規模に応じて特例が適用できるため、固定資産税を抑えることができます。
区分 | 定義 | 負担水準の決め方 |
小規模住宅用地 | 200㎡までの土地 | 課税評価額×1/6(1/6に軽減) |
一般住宅用地 | 小規模住宅用地以外の住宅用地 | 課税評価額×1/3(1/3に軽減) |
住宅用地の基準は住宅1戸につき定められているため、一つの土地に2戸住宅を建てた場合、400㎡までの課税評価額が1/6に軽減され、固定資産税が減額されることになります。
参考:東京都主税局 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)【土地】7 土地の課税標準額の算出方法(固定資産税)(2022-06-29)
アパート経営に限りませんが、収益物件を持っていれば、病気や事故などで働けなくなった場合でも、全く収入がなくなるという事態を防げます。収益物件に住んでいる場合、アパートローンの返済が終われば家賃がそのまま収入となるだけでなく、自宅の居住費用もかかりません。定年までにローンの返済が済むように設定しておけば、安定した老後資金を確保できるでしょう。
- 「自分が働けなくなったときの収入が心配」
- 「年を重ねてからもそれまでと同じように働けるだろうか」
- 「老後はゆっくりしたい」
などと考えている方にとって、こうした収入があることは大きなメリットです。また自宅としている収益物件の一室は、他の部屋と同じ条件のため、正しい手続きを行えば再び賃貸としても貸し出しやすいはずです。そのため万が一のときに相続人が処分に困るといった事態に陥りにくく、収益性のある不動産を遺産として残すことができます。

収益物件には、どの物件も空室リスクがあります。これはアパートの立地や建物の性能、設備、管理体制によって大きく変わります。土地から購入する場合は、長期的な目線で投資に適した立地を選択してください。どのような間取りが人気なのか、また喜ばれる設備にはどういったものがあるかなどについても把握して、反映するようにしましょう。耐震強度はもちろんのことですが、劣化等級も気にしておきたい基準です。劣化等級は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく、住宅性能表示制度により定められているもので、劣化対策が行われている程度を表しています。アパートは長期に渡り運用する資産です。借りてくれる人に気持ちよく住んでもらうためにも、こうした基準を十分に満たしているかしっかり確かめるようにしましょう。
収益物件に住むと、固定資産税や相続税などを節税できる可能性があり、老後の収入源としても期待できます。一方で、将来の修繕費や空室のリスク、入居者トラブルなどのデメリットについても理解しておく必要があります。収益物件に住みながら安定した収入を得るためには、計画段階でメリットとデメリットをある程度織り込み、想定している利回り等が適切かどうか、しっかり検討しておくようにしましょう。アパート経営による投資にはさまざまなメリット・デメリットがありますが、うまくデメリットを解消しメリットの大きな運用をしていくためには、不安や疑問を相談できる不動産会社を選ぶことが大切です。
